糖尿病を指摘されたら
糖尿病の患者数は増え続けており、糖尿病予備群とされる方も1千万人以上存在すると指摘されています。健康志向が高まっている現在、健康診断や人間ドックなどの結果を確認して、ご自身の血糖値を把握されている方も増えてきています。糖尿病診断や治療の指標となるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を定期的にチェックされている方も少なくありません。その反面、糖尿病と診断される状態でも約4人に1人がまだ治療を受けていないとされています。
早期に発見することで、生活習慣を少し改善するだけで血糖値を改善できる可能性も高まります。進行してしまうと制限も多くなり、服薬も必要になって、改善が困難になっていきます。また、糖尿病には深刻な合併症が多数あるため、進行させないことが大切です。当院では、患者様としっかりコミュニケーションをとった上で、状態やライフスタイルなどに合わせた治療方針をご提案しています。健康診断などで血糖値が高めと指摘されたら、早めにご相談ください。
糖尿病とリスク
糖尿病増加が懸念されるのは、高血糖によって動脈硬化が進行して脳出血や心筋梗塞リスクを上げてしまうことと、高血糖が毛細血管や神経にもダメージを蓄積させて深刻な合併症を起こす可能性があるからです。さらに、糖尿病があると感染症リスクも大幅に上昇してしまいます。
糖尿病には、神経障害、網膜症、腎症という三大合併症があり、失明や人工透析が必要になる腎不全、神経障害による足の壊死などを起こす可能性があります。進行するにつれて、まず神経症が、そして網膜症が、さらに腎症が発症するリスクが高まっていきます。神経症や腎症は当院でしっかり診療できますが、網膜症は眼科で専門的な検査を定期的に受ける必要があります。
糖尿病の検査と治療
当院では、血糖値とHbA1cの結果が当日中にわかる検査機器を導入しています。できるだけ検査を受けた当日の結果説明と治療方針の決定を心がけています。
外来でインスリン導入や血糖値自己測定の指導も行っています。また、管理栄養士による栄養指導やカウンセリング、運動療法やセルフケアなどに関するサポートなども行って、トータルにフォローしています。
合併症の評価
糖尿病は早期にはほとんど自覚症状がないため、気付いた時には全身の血管に障害が起こっていることが多く、合併症による問題がすでに起きているケースがあります。糖尿病治療では、特に注意が必要な三大合併症を中心に、定期的な合併症チェックが不可欠です。症状がまったくない状態でも尿検査での微量アルブミン測定検査を受けるなどでしっかり合併症の状態を把握し、定期的に眼科検診を受けましょう。
1神経障害
三大合併症の中では最も早く出できやすい合併症です。主な初期症状には、手足のしびれ、ケガやヤケドの痛みを感じにくいといった手足の末梢神経障害があります。神経障害では自律神経にダメージが生じることもあります。この場合には、筋萎縮や筋力低下、便秘と下痢を繰り返すなどの消化器症状、発汗異常、立ちくらみなどを起こすことがあります。
2網膜症
眼球の奥には、目に入ってきた光を受け取る網膜があります。網膜は毛細血管に富んだ組織で、高血糖によるダメージを受けやすい場所です。重症化すると失明する可能性があり、日本の中途失明の原因では糖尿病網膜症が長年上位を占めています。特に症状がないまま進行して急激に視力低下を起こすことがあるため、眼科で定期的に検診を受けることはとても重要です。
3腎症
腎臓は毛細血管がからみあった糸球体で血液をろ過して尿を作っているため、高血糖によるダメージを受けやすい組織です。早期の尿検査で微量アルブミン尿が確認できた時点で、進行させないための治療を行うことが重要です。尿検査で尿たんぱくの量を調べ、血液検査も行って進行状態を見極めます。高血糖が続くと腎臓の毛細血管に蓄積したダメージにより腎臓の機能が低下していき、腎不全になります。腎不全になると尿が作れずに身体の老廃物や余分な水分などを排出できなくなるため、透析治療が必要になります。日本では、透析導入の原因疾患として長く第1位を糖尿病腎症が占めています。進行させないようの血糖値をコントロールしていきましょう。
その他血管合併症
脳梗塞、心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症の発症リスクが高くなっています。
当院ではこうした合併症を起こすリスクを確認するために、心臓・頸動脈・下肢動脈を調べる超音波検査、心電図、ABI・PWV(動脈波測定)などの検査を行っています。
糖尿病の治療
糖尿病治療で最も重要なのは、食事・運動療法です。薬物療法を行う場合にも食事・運動療法は不可欠です。
食事・運動療法というと、とにかく厳しい内容を想像される方が多いのですが、続けることがなにより大事ですので、無理をするのは禁物です。糖尿病の状態、年齢、他の既往症、ライフスタイルなどに合わせることや、経済的な負担も考慮して、持続できる内容を当院では患者様と相談しながら決めています。また、再診時には改めてご相談してよりご自分に合った内容のものにブラッシュアップしていきます。
薬物療法が必要な場合も、状態やライフスタイル、年齢などに合わせた治療薬をご提案しています。治療で状態が変わればお薬の量や処方内容をきめ細かく調整して、より適切な治療を行います。また合併しやすい他の生活習慣病に関してもしっかり状態を把握して、トータルな治療を行います。
生活習慣や服薬などによって血糖値をコントロールするのは、患者様ご本人です。セルフマネージメントが上手にできれば血糖値が下がってきます。それをしっかりサポートするのが医師や管理栄養士、看護師などの当院のスタッフです。気になることやご要望などがありましたら、何でもご相談ください。
糖尿病栄養指導
管理栄養士による個別の栄養相談です。糖尿病や脂質異常症などがあって、病状改善に食生活の改善が必要と医師が判断した場合に行われます。ライフスタイルや食習慣、食の好み、ご家族構成などを伺った上で、患者様と一緒に食生活の改善について考えていきます。持続できることが需要ですので、できるだけ無理せずにできる範囲の具体的なアドバイスをするよう心がけています。食べる順番など、それほどストレスなく効果につながる方法は患者様によって様々です。ご自分にあった方法を見つけて、食を楽しみながら適切な制限を続けていけるようサポートします。
相談内容
- 血糖自己測定
- インスリン自己注射
- 低血糖時の対応方法
- シックデイ時の対処法(シックデイは糖尿病の方が他の病気になった状態です)
- 日常生活の注意