痛風・高尿酸血症

高尿酸血症(痛風)とは

人間の身体を構成する細胞にはプリン体という物質があり、これが分解されると老廃物として尿酸が産出されます。高尿酸血症では、尿酸が作られる量が増える、尿酸を排泄する量が減るといった原因によって血液中に含まれる尿酸値が高くなっている状態です。血中の尿酸値が高くなると、尿酸が鋭い針のような形状の結晶になって関節にたまります。痛風発作は、この尿酸結晶が関節に炎症を起こして激痛を生じさせている状態です。高尿酸血症が進行していても痛風発作を起こさないこともあります。健康診断などで高尿酸血症を指摘されても痛風になったことがないから大丈夫と治療を受けないケースがありますが、高尿酸血症は腎臓などにもダメージを蓄積してしまうため、早期の受診が重要です。

受診をおすすめする方

  • 健康診断や人間ドックなどで高尿酸血症の指摘を受けた
  • 肥満でお腹がぽっこり出ている
  • 痛風発作を起こしたことがある
  • 外食が多く、お酒も必ず飲む
  • 野菜をあまりとらない
  • 水分をあまりとらない
  • 運動不足気味
  • 血糖値が高い
  • 血圧が高い
  • 高脂血症を指摘された
  • 高脂血症や痛風の血縁者がいる

など

高尿酸血症の原因

生活習慣の不摂生によって起こっているケースがほとんどを占めると考えられています。食べ過ぎ、肉類や脂肪分の多い食事、飲酒習慣、肥満などが主な原因と考えられており、内臓脂肪が多いタイプはリスクが高いとされています。脂肪細胞は遊離脂肪酸を分泌し、これが肝臓に運ばれるとプリン体代謝が活発になって、尿酸が増えてしまうと考えられています。他に、遺伝や薬剤、腎不全、白血病などによって発症することもあります。
日本人の成人男性は約20%が高尿酸血症であることがわかっており、発症頻度の高い病気です。

痛風発作について

血液の高尿酸状態が続くと、関節に尿酸結晶がたまり、炎症を生じると痛風発作を起こします。足の親指の付け根に起こることがほとんどを占めますが、足首・ひざなどに症状が起こることもあります。なお、尿酸値が高くても痛風発作を起こさないこともよくあります。
痛風発作は尿酸値が急激に変動した時に起こることも多いため、治療の際にはゆっくり尿酸値を下げていく必要があります。また、激しい運動などがきっかけとなって痛風発作を起こすこともあります。

高尿酸血症の診断基準と検査

痛風発作以外に症状を起こすことがないため、高尿酸血症の診断は、血液検査で尿酸値を調べて行います。尿酸値が7.0mg/dl以上で高尿酸血症と診断されます。関節液を採取して尿酸結晶の有無を確認することで診断につなげることもあります。痛風発作が起きている時には正確な尿酸値が計測できないため、血液検査は状態が落ち着いてから改めて行います。
適切な治療を行うためには、尿酸の産出が多いタイプか、尿酸排泄が低下しているタイプかを尿中の尿酸排泄量を検査して調べます。

高尿酸血症の合併症

高尿酸血症は、痛風を起こさない限り自覚症状なく進んでいきます。尿酸結晶は、腎臓をはじめとした身体の様々な場所にたまって合併症を引き起こします。また、他の生活習慣病同様に動脈硬化を進行させるため、脳出血や心臓梗塞を起こすリスクも上昇してしまいます。高尿酸血症の代表的な合併症には下記のものがあります。

腎機能障害

腎臓は毛細血管が数多く集まっていて、高尿酸のダメージを蓄積しやすい場所です。尿酸結晶が腎臓にたまると腎臓の機能が徐々に低下していき、最終的には腎不全を発症します。また、尿酸結晶がたまっていない場合でも、高尿酸状態が続くと腎不全を発症することがわかっています。腎不全になると血液中の余分な水分や老廃物などを排出できなくなるため、人工透析治療や腎移植が必要になってしまいます。

尿路結石

尿路は、腎臓、尿管、膀胱、尿道などの尿の通り道で、ここに石がある状態が尿路結石です。腎臓から膀胱へつながる尿管は途中に狭くなってる部分があって、ここに石が詰まると激痛を起こします。

痛風結節

身体の様々な部分に尿酸結晶がたまります。それによって硬いしこり状の「結節」ができた状態です。骨や脊髄の中にできると骨折や麻痺につながる可能性があります。

動脈硬化

他の生活習慣病と同じように、高尿酸血症でも動脈硬化が進行しやすくなります。同じ生活習慣によって発症する糖尿病・高血圧・脂質異常症などを合併しているケースもかなり多くなっています。複数の生活習慣病があると、かなり低い数値を保っていても動脈硬化が進行しやすいので注意が必要です。

高尿酸血症・痛風の治療

生活習慣によって生じる病気ですので、食事や運動などの生活習慣で改善を目指します。ただし、尿酸値が6.0mg/dl以下に下がらない場合には薬物療法が必要になります。

食事療法

バランスが良く、食物繊維が多い食事を3食、規則的にとるようにしてください。水分もしっかりとるようにすると尿酸の排泄が促されます。
プリン体は尿酸のもとになるものなので、プリン体が多いレバーなどの内臓、うになどの魚卵はできるだけ控えます。また、ビールだけでなくアルコールはすべて尿酸値を上昇させるため、飲酒量を控えてください。

運動療法

肥満解消のための軽い運動を習慣付けましょう。1日に30分程度の有酸素運動が適当です。ウォーキング程度で大丈夫です。激しい運動は痛風発作のきっかけになる可能性があるため、避けてください。

薬物療法

タイプによって、尿酸の産生を抑える薬や尿酸の排泄を促進する薬などから適切なものを処方します。急激に尿酸値を下げてしまうと痛風発作を起こしやすいため、慎重にコントロールしています。なお、尿酸値が十分に下がっても結晶が溶けきるまでには時間がかかりますので、しっかり治療を続けることが重要です。
痛風発作が起きている時には痛み止めを、発作の前兆で受診された際には予防薬を処方しています。

積極的な水分摂取を

暑い日に、のどがカラカラの状態でうまいビールが飲みたいと、午後は水分の摂取を控える方がいます。これは高尿酸血症のハイリスクな行動です。夏は汗をかいて体内の水分が失われるため、血液中の尿酸の濃度が上がって高尿酸状態になりやすいです。そこに、プリン体の多いビールを摂取してしまうと、アルコールは身体から水分を失わせるため、ますます血液中の尿酸濃度が上がってしまいます。
季節に関わらず高尿酸血症の方は血液中の尿酸濃度を下げるために水分を積極的にとる必要があり、夏場は特にのどが渇く前にこまめな水分摂取を心がけるようにしてください。

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